自然葬推進法 基本理念と法案第1章について

「自然葬推進法」制定に向けて~法案の基本理念と基本的施策について~

中村 裕二

 さて、前回は、自然葬推進法(案)( 以下「法案」といいます。)の第一章総則のうち、第1条の目的と第2条の定義についてご説明いたしましたが、今回は、第3条から10条まで解説いたします。

 《法案第1章》第3条には、法案の基本理念が書かれています。法案第3条1項は「すべて国民は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい自然葬の自由を享有し、自然葬が円滑に実施できる処遇を保障される権利を有する。」と定めていますが、私たち一人一人が個人として尊重される権利(憲法13条)つまり 個人の尊厳を有しているから、そこから導かれる自己決定権として、死後に自然葬を選択する自由が認められているのです。

 そして、自然葬は、自然環境保全のために調和のとれた方式で実施されなければならないので、「自然葬は、国、行政機関、地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然葬に関し専門的知識を有する者等の多様な主体が連携するとともに、自主的かつ積極的に取り組んで実施されなければならない」のです(法案第3条2項)。

 従って、国及び行政機関は、第3条の基本理念で示した「基本理念にのっとり、自然葬のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」こととなります(法案第4条)。

 なぜなら、国民の権利義務を守り、それを具体化する責任が、まず第一に、国及び行政機関にあるからです。

 そして、地方公共団体も、国と同様に、「第3条の基本理念にのっとり、自然葬のための施策等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」こととなります(法案第5条)。
 なぜなら、自然葬を実施する場所は、国が管理している場所や地方公共団体が管理している場所など様々で、その地域ごとに習俗や自然環境が異なり、国では手の及ばない、きめの細かい人権調整が必要となってくるからです。

 そして、国及び行政機関は、「この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」のです(法案第6条)。

 自然葬を実施するにはお金がかかります。
 生活保護を受けている方々など経済的弱者の皆さんにも、自然葬を実施する権利があり、お金がないという理由でその権利が踏みにじられることがないようにする必要があります。また、自然環境の保全に繋がる自然葬を実現するためには、相応の必要経費がかかる場面が出てくるかもしれません。

 そのとき、個人が善意で費用を負担するのではなく、国や行政機関が法令に則って、予算を支出することができれば、環境保全に資する自然葬が永続的に実施できることとなります。

 まさに自然葬がSDGsにつながることとなります。