行政・マスコミ等とのやりとり

厚労省の珍妙な解釈 
―墓埋法と自然葬― 解説

厚労省健康局生活衛生課長が昨年(2004年)10月22日付文書「樹木葬森林公園に対する墓地埋葬等に関する法律の適用について」で北海道環境生活部長からの質問に以下のように回答しています。

 「墓地等の経営及び管理に関する指導監督については、地方自治法上の自治事務とされており、具体的事案に関する判断については、許可権者の裁量にゆだねられておりますが、一般的に言えば、地面に穴を掘り、その穴の中に焼骨をまいた上で、その上に樹木の苗木を植える方法により焼骨を埋めること、または、その上から土や落ち葉等をかける方法により焼骨を埋めることは、墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第4条にいう「焼骨の埋蔵」に該当するものと解されます」

 さらに、あるマスコミの自然葬についての取材にたいしてつぎのような説明(要約)もしています。

 「地表にまいた遺灰(焼骨)の上に土や木の葉をかぶせても埋蔵に当たる」

 厚労省はこれまで「自然葬は墓埋法の対象外」と明言しています。しかし、同省幹部OBが全日本墓園協会の役員に天下りしているせいでもないでしょうが、自然葬という新しい葬送形態を墓による旧い葬送形態の変種の一つとみなしているようです。自然葬は海か山などの自然に遺灰を還して大きな自然の循環の中に還ることを願うもので、古代からの伝統的葬法を生かすとともに墓地造成による環境破壊を防ぐことをめざしています。旧来の墓による葬送形態とはまったく次元の違う葬送形態です。

 厚労省は墓埋法の「埋葬」の定義「死体を地中に葬ること」、つまり土葬を拡大解釈して「焼骨の埋蔵」にまで広げているのです。

 しかし、法律の解釈として死体の「埋葬」と焼骨の「埋蔵」とを混同することは許されません。

 「埋葬」については、墓埋法5条1項で、行政の許可を得て行うことと定められているのに対して、「埋蔵」についてはそのような規定はありません。墓埋法は公衆衛生上の必要からできたもので、無害の焼骨は規制する必要はなく、墓に入れようが、家に保管しようが、まこうが、葬送としての節度をもってすれば本来自由なはずです。5条1項では、「火葬」には行政の許可を求めていますが、火葬後の「焼骨」の扱いには、行政の許可を求めていません。実際に、埋葬・火葬許可証は発行されますが、埋蔵許可証は発行されません。

 厚労省は「焼骨」を「埋蔵」する場所は「墓地としての墳墓」と解釈し、その延長線上に「穴を掘って土や落ち葉をかぶせる行為」を埋蔵とみなして禁止しているのでしょう。さらにそれを拡大延長して「地表にまいた遺灰(焼骨)の上に土や木の葉をかぶせても埋蔵に当たる」などという珍妙な解釈にまで発展したのでしょう。

 本会の「再生の森」での自然葬は、周辺との関係に配慮し、広い森の自然にあまり手を加えたりせず、山林全体を使ってもよいし、その中の1本あるいは数本の木の根っ子に粉末状にした遺灰をまいています。まいた遺灰の上に水をまいても土をかけることはありません。本会はスタート当初から慎重の上にも慎重を期してきました。変ないいがかりをつけられ足をひっぱられないようにしてきたのです。

 自然葬について、地面に穴を掘って焼骨を埋めるのは埋蔵に当たるから墓埋法違反と言うにとどまらず、地面に焼骨をまいて土をかけたり、木の葉を置くだけでも埋蔵に当たるから墓埋法違反などというのはおかしな解釈です。

 あるマスコミの論説委員は、「無害の焼骨だから穴を掘ろうが、土をかけようが実際には何の問題もない。むしろ遺灰をむき出しにしておくより土をかぶせた方がよいのに……同じことをしても樹木葬は墓地だから許されるというのも変な話だ。長沼町散骨禁止条例に従って墓地で焼骨をまいても、地下水が汚れて風評被害を招くという住民からの苦情が来るのは同じではないか」と首をかしげています。

ルールと法律

 人間社会には生活をするためのルール、礼儀、作法などの社会規範があります。人間としての条理、習慣にもとづくものもあります。法律は社会規範のひとつですが、特殊なもので権力による強制力を持っています。現在の市民社会では法律による規制は最小限でなければならないというのが常識です。

 長沼町の散骨禁止条例は強制力を持った法律です。町内で起きた一つ一つのトラブルは対立した両者の話し合いや調停者、助言者もまじえてのルールづくりで解決できますし、そうすべきです。

 葬送の自由は、現在の多様化した価値観や宗教感情を互いに尊重するところにあります。一方的な立場から、相手の立場を全否定するような場合に、往々にして紛争が生まれます。

 本会の自然葬に反対の方がいるのは当然です。科学的根拠がなくても感情的な反発というものはあります。それを配慮して本会は自主ルールをつくっています。

 例えば、海では、遺灰の粉末化、海岸でなく沖に、養魚場、養殖場を避ける、水溶性の紙に遺灰を包む、セロハンでまいた花束を禁じ、花びらだけにする―など。

 山(再生の森)では、山林全体を使い、こまぎれ分譲しない、遺灰を粉末化する、人家、施設から離れる、飲み水の水源地を避ける、庭の場合は隣家との話し合い―など。

 市民運動として自然葬に道を拓いた本会に続いて散骨ビジネスも広がりました。業者も節度あるルールという点では、ほぼ本会の自主ルールを踏襲しています。

 こうしたルールに沿って、自然葬に賛成、反対の双方の話し合いが行われ、譲るところは譲って折れ合うのが民主的な解決方法でしょう。どうしても決着しない場合は裁判に持ち込まれることもあります。

 ルールは即法律づくりと短絡的に早合点するのは禁物です。長沼町の散骨禁止条例は、トラブルをめぐって有効な話し合いもなく基本的人権である「葬送の自由」をいきなり否定するものです。包丁は家庭で自由に使える道具ですが、時に人を殺す凶器にもなります。危険だからといって包丁の使用を法律で規制して家庭で使えなくするのは愚です。

 「葬送の自由」を条例で規制するような愚を犯してはなりません。 (M)

長沼町関連

★長沼町に対する請願のやり取りは自然葬推進法のページに掲載しています。

“樹木葬”公園でトラブル 北海道・長沼で住民反対の中で強行

 北海道長沼町で、札幌のある団体が樹木葬公園と称する「散骨場」の分譲を始め、周辺の住民が反対の声を上げ、町議会も反対決議するなど、とんだトラブルを招いている。法や条例による自然葬規制にもつながりかねず、警戒を要する動きだ。

 この団体は、1999年に設立されたNPO法人「22世紀北輝行研究会」。同町幌内に所有する山林約2万3,000平方メートルに公園を造り、4平方メートルずつ区画して散骨用に分譲する。永代使用料として52万5,000円と年1万2,600円の管理費が必要という。

 しかし、周辺は牧場や畑が広がり、農家や新興住宅地も点在する近郊農業地帯とあって、周辺住民が「地下水の飲用ができなくなる。農産物への風評被害も心配」と反対の声を上げ、6月10日には町議会も設置反対を決議した。そんな動きの中でも、団体側はあくまで「散骨」なので法に触れないと主張、事業を強行している。

 これに対して町側と道は、「事業の是非を判断できる基準がない」と困惑しているという。また、町は地元への説明会の開催を団体に指導しているが、地元住民が強硬にボイコットしている。

 この団体の「運営概要」によれば、「遺骨は焼骨されたものとし、樹木の根元約50センチ程度に焼骨をそのまま散骨」とあり、「散骨」という言葉を使いながら、骨は粉末化しなければならないとは言っていない。実際には「埋葬」と見られかねないフシもあるように、事実「埋葬」という言葉も散見され、墓地埋葬法などに触れる恐れが当然指摘されよう。

 また、これほどはっきり反対の動きが表面化していながら、かまわずに強行する姿勢も大いに疑問である。それよりも気になるのは、これに対抗して、自然葬を法律や条例で規制する動きが出かねないことだ。既に町議会も法規制を要請する動きを見せているが、町や道などは今のところ慎重な構えのようである。

 目下は、反対の声の包囲網の中で事業を進めても、実際にどれだけの応募者が出るかといった疑問もあり、展望は不透明だが、行政の動く方向などを油断なくウオッチングしていかねば、と緊張感をもって注目している。

(注:6月11日付北海道新聞、同15日付読売新聞も参照した)

(北海道支部長 塩崎義郎)

北海道庁や厚労省では違法性ないと了解
樹木葬森林公園問題で長沼町対立のもと、近隣とのコミュニケーション不足

 「再生」54号(昨年9月1日発行)で報告した北海道長沼町の樹木葬森林公園の問題は、町民多数の反発の声を受けて、町が規制条例づくりの動きを始めるまでに至っている。北海道支部としては引き続き経緯を慎重に注視していくつもりだ。

 この問題は、札幌のある事業体が樹木葬森林公園と称して同町で“散骨場”の分譲を始めたのに対し、地元の住民が地下水の利用に差し支える、農産物への風評被害が心配だ――などとして7000人を超す署名とともに強い反対の声をあげ、町議会でも反対決議をするなど、事業者との対立が続いているものだ。このような事態の中で、実際の散骨はこれまでに1件行われただけで、もう1件毛髪をまいたケースがあった、という。

 昨年秋、町は現地を視察し、「穴を掘って埋めるものではない」というやり方を確認し、北海道庁、厚生労働省との間でも公園の行為そのものは、違法とはならないことで了解されているという。

 問題の直接原因は、この“散骨場”が近隣の農家や農地、さらに住宅開発地から数100メートルしか離れていないにもかかわらず、近隣との間で十分な意見交換などがないまま散骨事業を始めたことだ。

 北海道支部としては、この散骨事業が葬送の自由と自然葬の社会的合意をめざす私たちの運動と同一視されるようであれば、大変な迷惑だといわざるを得ない。会の「ニセコ再生の森」は住宅地や農地から全く離れた山中にあり、樹木葬森林公園とは次元が異なることはいうまでもない。

(北海道支部長・塩崎義郎)

 長沼町に限らず、秋田県、高知県などでも同じような山林による散骨ビジネスが計画されており、どこも岩手県一関のお寺がやっている樹木葬墓地を手本にしているようです。一区画4平方メートル(長沼町)といった風に山を“切り売り”する点、永代使用料を50万円余にしている点など、共通しています。(この項、「再生」編集担当)

北海道・長沼町の『散骨禁止条例』は廃止を町長に請願書を送付
憲法に保障された「葬送の自由」を否定、と

 北海道・長沼町で起きていた樹木葬森林公園をめぐるトラブルは、町による?散骨禁止条例?制定に発展しました。われわれの運動に直接かかわる問題であり、会は経緯を注視してきましたが、このほど開いた理事会で協議し、散骨禁止を規定した「長沼町さわやか環境づくり条例」は憲法、墓埋法、地方自治法に違反する条例で、基本的人権である「葬送の自由」を否定するものと判断しました。5月1日の施行に合わせて、板谷利雄町長に、同条例を廃止する条例案を議会に提出することを求める請願法にもとづく次のような請願書を送付しました。同法は、官公署は「請願を誠実に処理しなければならない」とし、処理には通念として回答を含みます。町の誠意ある回答を待ちたい。

国、道庁の適切な「助言」あったか 
―問題の経過―

 長沼町で"散骨"をめぐって騒ぎが起きたのは一昨年秋。札幌市のNPO法人「22世紀北輝行研究会」の向井隆会長が社長をつとめる有限会社「北輝行」の「ホロナイ樹木葬森林公園」事業計画が地元紙に報道されたことに始まります。

樹木葬公園、当初は墓地を計画

 その事業内容は、同法人の役員が町内に所有する約2万3000平方メートルの山林を森林公園として開発、うち1万3000平方メートルを樹木葬の用地にあて、1区画4平方メートルずつに区切り、1区画につき永代使用料52万5000円、年間管理費1万2600円で区画内に散骨してもらうというものです。販売区画総数は800から1000区画を予定していました。

 同法人の話では、はじめ岩手県一関市の寺院が始めた墓地に穴を掘って焼骨を埋め、その上に石塔かわりの樹を植える樹木葬方式をまねて樹木葬墓地公園を計画、料金などもほぼ同じにして長沼町に申請したが認められなかったそうです。そこで昨年3月から散骨方式で遺灰を樹下にまく?樹木葬?に切りかえて事業に踏み切りました。これまでに1件の利用者があり、契約者も20人いるといっています。

 この事業計画が公表されたとたんに地元住民から反対の声が一斉に上がりました。町内の有権者の7割が反対署名をしました。幌内地区は酪農、稲作、畑作農業地区で、「地下水に遺灰がまじると気持ち悪い」「家畜の飲み水が心配」「農作物への風評被害がこわい」などが理由になっています。

 こうした声にこたえて長沼町議会は昨年6月10日、「ホロナイ樹木葬森林公園設置に反対する決議」を行い、国や道庁などにも訴えました。

 有限会社「北輝行」の事業内容は、NPO法人がリードしているというにしては、山林をこまかく区切って高く売るなど墓地業者顔負けの営利主義(事業主は費用の一部を公園建設にあてるというが)がめだつようです。これでは事業を始める際のうたい文句、「森を守り、自然を豊かに維持する」ことにはほど遠いのではないかと思われます。

 本会の自然葬は、山や海に遺灰を還す伝統的葬法を守るとともに自然環境保全をめざしています。「再生の森」での自然葬も周辺との関係に配慮し、広い森の自然に手を加えたりせず、山林全体を使うもよし、そのなかの1本、あるいは数本の木の根っ子にまいてもよい、という方法をとっています。費用はほとんどが実費で、3万円から10数万円ほどしかかかりません。参考までにいえば、会の自然葬は海が8割、山(再生の森)が2割となっています。

必要だった十分な対話と調整

 一方、反対する長沼町の地元住民の声は、科学的な裏づけにとぼしい感情的な理由がめだつように思いますが、といって根拠のない風評被害が起きないとは限りません。

 厚労省と北海道庁は事業主と長沼町、町議会、反対住民とのトラブルについて相談を受けていたようです。その際、散骨方式については「穴を掘って遺骨(焼骨)を埋め、その上に樹を植える」ことがなければ「自然葬、散骨は墓埋法の対象外」という従来の見解に照らして問題はないとしています。

 葬送の自由という基本的権利もその行使には、公共の福祉による制限と、各人、各団体の自由が互いにぶつかる場合、調整に関する内在的制約は避けられません。いかなる権利も、その行使には節度ある方法で行われなければならないのは、当然の社会的制約です。

 それらを踏まえたうえで、長沼町の場合、「何人も墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」というような葬送の自由を否定する条例を認めるだけの"公共の福祉"があると言うことができるのでしょうか。厚労省と道庁は地方自治法にもとづく適切な「助言」「勧告」をしたのでしょうか。

 国、道庁は双方の利害対立を対話と調整で解決する道をさぐるべきで、憲法違反の条例制定を避けるよう「助言」「勧告」すべきであったと思います。

 違憲の条例を放置した国、道庁の責任は重大であると考えます。

長沼町さわやか環境づくり条例

(目的)

第1条
この条例は、町の環境美化を推進するために、町、町民等、事業者及び土地占有者等の責務その他必要な事項を定め、良好でさわやかな環境を確保し、清潔で美しいまちづくりを進めることを目的とする。

(定義)

第2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
  1. (1)町民等 町の区域に居住する者及び滞在者(旅行等により町を通過する者を含む。)をいう。
  2. (2)事業者 事業活動を営む者をいう。
  3. (3)土地占有者等 土地又は建物を占有し、又は管理する者をいう。
  4. (4)ごみ 空き缶、空きびん、食品容器その他の容器、紙くず、たばこの吸い殻、チューインガムのかみかす、粗大ごみその他の廃棄物全般をいう。
  5. (5)焼骨 人の遺体を火葬した遺骨(その形状が顆粒状のものを含む。)をいう。
  6. (6)散布 物を一定の場所にまくことをいう。
  7. (7)墓地 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条第5項に規定するものをいう。

(町の責務)

第3条
町は、第1条の目的を達成するため、町民等、事業者及び土地占有者等に対して環境美化意識に関する啓発を行うとともに、自主的な環境美化活動を促進させるなど、必要な施策を講じなければならない。

(町民等の責務)

第4条
町民等は、自主的に清掃活動を行うなど、地域の環境美化に努め、町が実施する施策に協力しなければならない。
2
町民等は、家庭の外で自ら生じさせたごみを持ち帰り、又は適正に処理するよう努めなければならない。
3
町民等は、飼育し、又は管理する犬又は猫が家庭の外でふんをしたときは、そのふんを持ち帰り、処理しなければならない。

(事業者の責務)

第5条
事業者は、町が実施する環境美化の促進に関する施策に協力しなければならない。
2
事業者は、当該事業活動によって生じるごみの散乱の防止及び消費者に対する環境美化意識の啓発に努めなければならない。
3
事業者は、ごみの散乱を防止するため、自らの事業活動により生じるごみの回収、処分及び再資源化に必要な措置を講じなければならない。
4
事業者は、事業所及びその周辺その他事業活動を行う地域において、清掃活動の充実に努めなければならない。

(土地占有者等の責務)

第6条
土地占有者等は、町が実施する環境美化の促進に関する施策に協力しなければならない。
2
土地占有者等は、その占有し、又は管理する土地及び建物を常に清潔に保ち、ごみを不法に投棄されないよう環境美化に努めなければならない。

(投棄の禁止)

第7条
何人も、みだりにごみを捨ててはならない。

(散布の禁止)

第8条
何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。

(勧告)

第9条
町長は、第4条第3項、第7条又は第8条の規定に違反していると認めたときは、その違反者に対し、必要な措置を講じるよう勧告することができる。

(命令)

第10条
町長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくその勧告に従わないときは、期限を定めて勧告に従うことを命じることができる。

(立入調査)

第11条
町長は、第4条第3項、第7条又は第8条の規定の施行に必要な限度において、町長が指定する職員に、次の各号に掲げる場所に立ち入り、帳簿、書類その他の必要な物件を調査させることができる。
  1. (1)犬又は猫のふんが放置されている場所
  2. (2)ごみが散乱している場所
  3. (3)焼骨が散布されている場所又は散布されている疑いのある場所
2
前項の規定による立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3
第1項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(公表)

第12条
町長は、第9条の規定による勧告若しくは第10条の規定による命令に従わなかった者又は第11条の規定による立入調査を拒み、若しくは妨げた者があるときは、その旨を公表することができる。
2
町長は、前項の規定により公表しようとするときは、あらかじめ、公表されるべき者に弁明の機会を与えなければならない。

(罰則)

第13条
焼骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2
第4条第3項又は第7条の規定に違反し、第10条の規定による命令に従わなかった者は、5万円以下の罰金又は科料に処する。
3
第8条の規定に違反し、第10条の規定による命令に従わなかった者は、2万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
4
第11条第1項の規定による調査を拒み、又は妨げた者は、2万円以下の罰金に処する。

(両罰規定)

第14条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前条第1項又は第4項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、それぞれ同項の罰金刑を科する。

(委任)

第15条
この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

附則 この条例は、平成17年5月1日から施行する。

「ホロナイ樹木葬森林公園」設置に反対する長沼町議会の議決

 特定非営利活動法人22世紀北輝行研究会会長が代表者、有限会社北輝行が、事業主体となって、本町の幌内地区に設置を計画している「ホロナイ樹木葬森林公園」は、北海道初の遺骨を粉末状にして樹木の周辺に撒くという「散骨方式」の樹木葬ができることを広く周知しており、社会注視の的となっている。

 散骨は、法規制の対象外とはいえ、日本の食料基地北海道の牽引役としての地位を占める長沼町の中でも農産物・酪農畜産物生産が最も盛んな幌内地区において、このような施設を設置することは、到底容認できるものではない。

 当地区の丘陵地帯の住民は、飲料水を地下水に求めており、また地区内を走るウレロッチ川の流水は、かんがい用や家畜の飲み水として、重要な役割を果たしているところから、風雨による散骨の飛散・地下浸透・河川への流入が危惧されている。

 この影響による衛生問題等生活環境の悪化や今後の定住化の後退、地域自治組織の崩壊や市場評価の高い農産物・酪農畜産物等も世情に敏感な消費者の不買運動等の風評被害による大打撃が懸念されており、ひいては、地域住民の生活自体が立ち行かなくなることも考えられる。

 今、全町民が一丸となって、本町の自立に向け懸命の努力を求められている中で、基幹産業である農業の衰退や生活環境の悪化、イメージダウンに伴う観光入り込み客の減少など町や住民にとって不利益となる施設、地域の合意が得られない施設、住民福祉の向上に結びつかない施設は、長沼町には断じて必要ない。

 よって、本議会は、「ホロナイ樹木葬森林公園」の設置に強く反対し、計画撤回を求めるものである。

 以上、決議する。

平成16年6月10日 長沼町議会

地方自治体関連

北海道・七飯町や長野県諏訪市でも規制の動き

 北海道・七飯町や長野県諏訪市で「要綱」や「条例改正」などによる散骨・自然葬の規制が始まったことが新聞報道で分かった。長沼町のような違憲性の強い禁止条例には慎重だが、さまざまな手法で管理しようとする自治体の姿が浮かび上がっている。

 七飯町は、函館市の北にあり、大沼国定公園が展開する観光地。函館のベッドタウンにもなっている。

 4月1日施行の「七飯町の葬法に関する要綱」は6条からなり、散骨・自然葬を「法定外の葬法」と規定し、町内で事業者がこの葬法を提起した場合に備えてつくった。

 町長が事業地から除くよう指導する場所について、学校、病院、身障者施設の境界から110メートル以内、都市公園や自然公園、河川などを上げるほか、隣接市町の境界から500メートル以内などと細かく規定する。それ以外で事業者が計画する場合は地域で説明会を開き、町内会からは総意による承諾書を得たうえで町長に説明することとする。5条ではさらに、町内会などの承諾を得た場合でも、地域関係者以外の不特定多数の町民が拒否したときは、町長はその意思を重視するよう指導するとし、実質的には全面禁止に近い内容だ。

 「要綱」は、法令上の定義はない。これにもとづいて行われる行政運営は「要綱行政」といわれ、もともと法的効力はない。法理論上問題があって、条例など正式な形をとることに自治体が躊躇した場合に多用されている。事務手続きや市民生活に関わる規定だけでなく、市民の権利を制限し義務を課すような規定まであり、自治体関係者の間でも法治主義の見地から批判がある。

 自然葬は基本的人権とかかわる問題で、七飯町のケースはまさにそうした重大な問題をはらんでいるといわざるを得ない。

 諏訪市は、墓地や納骨堂、火葬場の経営許可基準を定めた「墓地等の経営の許可等に関する条例」を改正し、4月に施行した。「散骨場」を対象に加え、事業者は、予定地周辺の自治会に説明会を行い、同意を得た上で市長の許可を受けなければならない。

 諏訪市は、「散骨自体を規制することは、基本的人権に抵触する可能性もある」(1月27日付信濃毎日新聞)として墓地などの許可についての条例を改正することにした、と記者会見で述べている。また、担当者は「『散骨場』の経営体に対して許可基準をつくったものであり、個人の葬送の自由は否定していない」という。

 同市では、市内で宗教団体が「自然葬霊場」を設置しようとした問題がきっかけで検討が始まっていた。

(本会 理事 小飯塚一也)

(2006.3)

葬送ビジネス界

横行する散骨ビジネス 山林を利用して安易な金儲け

 本会が創立以来14年間にわたって普及と啓蒙の努力を続けてきた自然葬が社会的に認知される一方で、市民運動の理念とは全くかけ離れた営利目的の散骨ビジネスが最近になって各地に生まれてきた。会はビジネスとしての散骨を必ずしも否定するものではないが、事柄が死者の葬送という祭祀に深くかかわる以上、一般の営利事業よりも一層厳しい倫理性と、節度ある行動が要求されると考える。

 にもかかわらず、なかには会の自然葬と意識的に紛らわしい名称を名乗ったり、暴利をむさぼろうとする業者が少なくない。最近、会の周辺で起きた事例を報告する。

自然葬から“里山葬”に改名騒ぎ
鉱山会社が散骨ビジネスに進出

 事の発端は今年4月。会の本部事務所に秋田県で鉱山会社を経営するという人物が自然葬の資料を請求に訪れた。話を聞いてみると、青森県境の白神山地に近い所にゼオライトという建築材料になる鉱石の出る山を持っているという。もちろん会員でもないこの人物は、事務所で再生の森や自然葬の仕方などを“取材”して帰った。

 それから1カ月後、「“自然葬の森”で散骨を!」と大々的にうたったセールスパンフレットが送られてきた。それや社長の話などによると、“自然葬の森”と命名した山に50万円ほどで散骨でき、散骨した場所にはゼオライトで作ったプレートに故人の名前を刻んで埋めるという。一関の樹木葬がもうかっているとみて、考えついたらしい。

 自分の持ち山で安直に金儲けするため、散骨ビジネスに進出しようという魂胆が見え見えなケースだが、“自然葬”の名称を勝手に使用することで、あたかも会と関係があるかに装う営業方針は、会として絶対に容認できない。

 理事会では厳しく対処すべきだとの意見が大勢を占め、5月24日に会長名で以下のような抗議文を出した。これに対し、この会社は“自然葬の森”という名称を“里山葬の森”に変更すると回答してきた。

抗議文

 自然葬という言葉は、15年前に市民運動としてスタートした「葬送の自由をすすめる会」の理念と深く結びついている本会の造語である。

 貴殿は所有林を使って計画されている散骨ビジネスに“自然葬の森”と命名、すでにパンフレットまで出されている。

 これは「自然葬」のイメージを損ない、自然葬をボランティアによってすすめてきた本会会員1万1,000人の誇りを傷つけるものである。

 われわれは散骨ビジネスを否定するものではないが、今回のことは事業家としても道義的に許されない行為である。即刻その命名を撤回されたい。強く警告し、抗議する。

出版社とのやりとり

新聞・週間誌・書籍などで本会の活動が紹介されていますが、時には、誤解や、十分な取材無しに事実とは異なった内容が紹介されることもあります。放置することができない内容に対しては、会は毅然とした態度で、対応してきましたし、今後もこの態度は変わりません。

ここでは、例として岩波書店とのやり取りを掲載します。

現在(2017年4月)、岩波書店との間に何の問題はありませんが、記録として、掲載しています。これらの記事は会報の『再生』にも掲載されました。

出版社と著者に謝罪と本の回収廃棄など申し入れ
岩波アクティブ新書「死ぬ前に決めておくこと」が本会の信用・名誉を毀損

2002年3月に岩波アクティブ新書 松島如戒著「死ぬ前に決めておくこと」が出版されたました。 本会はこの本が出版された直後に内容を検討し、「散骨をしている任意団体」とは、名指しはしていないが、明らかに「葬送の自由をすすめる会」を指すと判断し、岩波アクティブ新書編集長と著者に対して関係部分の訂正と削除を求めました。

これに対して両者は連名で「本書の執筆にあたっては、著者の経験および公刊されている資料などをもとに記述していて、個別の取材はしていない。重版の際は当該箇所を適切な記述にする」という回答を文書で送ってきました。

 この回答で、

  1. ①この本で言うところの、散骨している任意団体とは本会を指していること
  2. ②著者は本会に対して電話一本の取材する努力もせず、きわめて安易な態度で書いていること
  3. ③一片の謝罪もなく、著しく誠意に欠けること・・・

が明らかになりました。

このため、会は出版社と著者に対して謝罪を強く求め(2002.5.1に出版社と著者に謝罪と本の回収廃棄など申し入れ)、あえて法的手段に訴えることも辞さない態度で臨みました。 これに対し、出版社側は本会に関する問題部分を2刷で削除したうえ、謝罪文を寄せてきたものです。

 これらの対応を検討した結果、本会では抗議した主旨は不十分ながら達せられたと判断しました。また、安田会長が岩波ブックレットで「お墓がないと死ねませんか」を出している関係などもあって、岩波書店との間で長く係争を続けるのは好ましくないとの配慮もあり、不満な点も残るものの、今回の謝罪文を機に和解の道を選ぶことにしました。

 事の発端は、本会がNPO法人化を進めているにもかかわらず、いま任意団体であることをとらえて「債務不履行を含む悲惨な事態」を招きかねないとする、取材不足からの短絡的偏見による不適当な表現にありました。

 この点について、本会の申し入れ書で明確にしたように、債務の履行を責任をもって確保できる体制を有しているか否かは「任意団体か、法人か」という尺度で決められる問題ではありません。むしろ、葬送、霊園ビジネスをめぐって宗教法人やNPO法人の形を装いながら、非営利は看板、実質は暴利をむさぼるに近い“業者”がいるのも現状です。本会は今後こうした面にも厳しい目を向けていきたいと考えています

2002.5.1発出の申し入れ書の内容

東京都千代田区一ツ橋2-5-5
 株式会社岩波書店 代表取締役 大塚信一殿

東京都千代田区九段北1-9-5-704
 NPOりすシステム内 松島如戒殿

葬送の自由をすすめる会 代表者会長 安田睦彦
上記代理人 弁護士 梶山正三

申し入れ書

 冠省 当職は、葬送の自由をすすめる会会長安田睦彦の依頼を受けて、同会の代理人として貴社及び貴殿に対し、次のとおり申し入れをします。

 貴社が「岩波アクティブ新書」の一冊として本年(2002年)3月5日付で刊行された「死ぬ前に決めておくこと」(著者松島如戒氏)の44ページ以下に次の記述があります。

 『しかし、現在私が知り得る範囲では、散骨の運動をしている団体は法人ではなく、任意団体である。意欲的な人が活発に運動を進めている間はよいが、そのような人がいなくなった場合、その運動はどうなるのか。運動はともかく、前金を預かって「散骨する」という債務の履行責任はどうなるのか。たいへん気がかりである。』(途中略)

 『団体に法人格があれば、清算・破産いずれにしても、存続が危うくなった際の債権・ 債務の法的処理システムが確立しているので、まだ救いがある。任意団体では利害関係者の一員としては、全く手掛かりすらつかめないという悲惨な事態すら想定せざるを得ない。運動実績の豊かな団体であれば、社団・財団という公益法人化の選択も可能であろうし、NPO法人ならただちに設立可能なはずである。可及的速やかな対応を期待したい。』(以下略)

 上記記述における「任意団体」が当会を指していることは明白であり、先に当会会長の安田から貴社アクティブ新書編集長桑原正雄氏及び松島如戒氏に宛てた抗議文に対する返書においても、当該事実は当然の前提として回答されていました。

 当会は、NPO法人化に関するメリット・デメリットをめぐる内部的な多くの議論の結論として、前記本の刊行される2ヶ月前に既に同法人化を理事会決定し、現在その手続き中です。それはともかく、中小の法人はもちろん、巨大法人でさえも、突然の倒産により、債務の履行を確保できず、多数の債権者にしばしば「悲惨な事態」を招来していることは周知の事実であり、債務の履行を責任をもって確保できる体制を有しているか否かは「任意団体か、法人か」という尺度で決せられる問題ではありません。

 上記記述は、当会に対する何らの問い合わせや調査もなく、理由にもならない理由により、あたかも、当会の債務の履行責任が確保されない惧れがあるかのような印象を読者に与えるものであって、当会の信用を著しく毀損し、かつ、自然葬推進の啓蒙活動とその良識ある実施に全力を傾注してきた当会の名誉を著しく毀損するものです。 よって、出版社である貴社と著者である貴殿に対し、次のことを要求します。

  1. 1)上記記述の当該部分が、当会の信用及び名誉を毀損するものであることを認め、当会に対して文書で謝罪の意を表すること。
  2. 2)朝日、毎日及び読売3紙の朝刊一面又は社会面に、上記記述の当該部分が、当会の信用及び名誉を毀損するものであることを認める旨、及び当該記述に関して、当会及び前記刊行本の読者に謝罪する旨の「謝罪広告」を1回掲載すること。
  3. 3)上記刊行本の全てを回収し、廃棄処分すること。本書面到達後10日以内に、以上の申し入れに対するご回答を当職宛てにされたい。

岩波書店からのおわび

葬送の自由をすすめる会 会長 安田睦彦殿

拝啓

 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

 貴会からのお申し入れにつきましては、取材不足などからご迷惑をおかけした点があったことをお詫び申し上げます。訂正させていただいた第2刷を改めてお送り申し上げますのでご査証ください。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

敬具

2002年7月1日

株式会社岩波書店

編集局部長 小野民樹

NHKとのやりとり

現在(2017年4月)、NHKとの間に問題はありませんが、過去に以下のようなやり取りがあったので、記録として、掲載しています。これらの記事は『再生』にも掲載されています。

NHK会長の見解を問う
最近(2004年当時)、相次ぐ偏見番組

 2004年当時、NHKの「難問解決!ご近所の底力」「くらしの経済」などの番組で、本会の扱いについて不当な点がめだち、会員からもかなりの苦情が本部に寄せられました。会の活動にも大きな影響がありますので理事会で協議し、番組製作担当者だけでなく、NHKとしての回答を求めるため海老沢勝二会長あての質問状を出すことにしました。

 当会は2004年から海老沢勝二会長(当時)あてに4回にわたり質問状を出してきました。しかし、一向に誠意ある回答がありませんでした。

 このため、橋本元一会長の新体制がスタートしたのを機に改めて6項目にわたる問題点をあげて文書で回答を求める抗議文を出しました。橋本新体制は発足を機に外部の声を大事にすると宣言しており、期待しての抗議文でした。

 番組制作をめぐって本会から提出した抗議文に対してNHK側から以下のような誠意ある陳謝文が寄せられました。今後とも本会の運動に対して関心と理解を深めることが表明されており、すでに双方向の勉強会を開くなど、一部は実現しています。


2004年6月1日

NHK会長 海老沢勝二様

NPO法人 葬送の自由をすすめる会 会長 安田睦彦

質問状

 2004年5月29日午前10時半から放映された「くらしと経済」の番組内での「散骨」について疑問の点が多い。それらについて回答をいただきたい。

 本会は15年前から葬送の自由と自然葬に道を拓いてきた、ただ一つの市民運動団体である。われわれはその後発生した散骨ビジネスを否定するものではない。公共放送がそれを紹介するのもよい。ただ、市民運動としてのボランティアによる自然葬の実態を紹介しないということは、散骨ビジネスとの比較を不可能にし、視聴者の選択の自由を奪い、視聴者の利益を損うものである。

 自然葬の運動についてまったく取材されていない。取材しないで報道するのがNHKの方針なのか。とくに1999年秋の誤報陳謝文(別紙)で本会の運動の重要性や取材報道の大切さを強調されたにもかかわらず、その後、1回もNHK記者が本会を取材に訪れたことはない。陳謝文以前は会のスタート時から折にふれて取材され、何回も本会の名前を出して放映されてきた。そのころの記者の方とは今も個人的に付き合いがある。

 他の市民団体については名前を出して報道されているのに、本会の場合だけなぜ名前が出せないのか。

 自然葬をされた理由など、本会の方なら正面を向いて堂々と誇りをもって語られる。

 ところが、放映された女性は後ろ向きで顔を見せず、いかにも後ろめたいことであるかのように印象をふりまいている。しかも、話に出た40万円の料金は本会の自然葬としては考えられない費用である。自然葬のイメージをいちじるしく傷つけるものである。 費用など業者よりのデータである。遺骨の粉末化でも本会が紹介する業者は1件1万円。放映された2~3万円より格段に安い。とくに自然葬の費用は、安いケースでは本会の仙台湾での特別合同葬(別紙)は1人4万円である。

 コメンテーターは公平な立場の人なのか。業者寄りではないか。


2004年10月18日

NHK会長 海老沢勝二様

NPO法人 葬送の自由をすすめる会 会長 安田 睦彦

質問状

 2004年10月14日午後9時15分から放映された「難問解決!ご近所の底力・お墓の心配-格安・納得・選択術」をめぐり、いくつかの疑問点について質問させていただきます。NHKとして正式に回答をお願いします。

1:
「遺灰をまいたところに少しの土をかぶせても違法」とあったがその理由は。
2:
樹木葬の名前を出しながら自然葬の名前を伏せた理由は。会員の出席者に自然葬といわず散骨というように仕向けた!

自然葬は散骨を含む大きな概念(伝統的葬法の復活と墓園開発による自然破壊をふせぐ葬法という意味で本会が造語したもの)で会員はその哲学に共鳴している。別添のように読売・朝日新聞などははっきり「自然葬」として使っている。
3:
樹木葬の寺の名前、主宰者の名前を出しながらNPO法人「葬送の自由をすすめる会」の名前、主宰者をナレーションから削ったのはなぜか。樹木葬で眠った方たちは250人と言いながら本会の実績には触れていない。本会は市民運動として違法といわれてきた自然葬に道を拓いて15年、会員1万1千人を擁し、923回、1584人の方たち(10月18日現在)を海、山に還してきた。
4:
格安、納得、選択術といいながら合同墓、樹木葬などの料金は出し、自然葬の費用について触れていないのはなぜか。格安かどうか視聴者はどう判断したらよいか。事実、本会事務局に自然葬は数十万もかかるのか?という問い合わせもあった。

 先に6月10日付で海老沢会長あてに「くらしと経済」の番組について出した質問状の趣旨が全く反映されていない。まことに残念である。


2004年11月9日

NHK会長 海老沢勝二様

葬送の自由をすすめる会 会長 安田睦彦

<会長のご見解を問う>

 最近NHKの「難問解決!ご近所の底力・お墓の心配―格安・納得・選択術」と「くらしと経済・散骨」をめぐって本会から別紙のような質問状を出し、番組担当者が釈明するというトラブルがありました。釈明文は全く質問にこたえておらず問題解決にはなりません。それはビデオと照らし合わせてごらんいただければ明らかです。

 1999年11月11日放映のクローズアップ現代「あなたのお墓はだれが守る?急増!無縁墓」において自然葬が違法行為であるかのような発言があった。その際、石黒エグゼキュティヴ・プロデューサーがNHKを代表して本会事務所に詫びと釈明に来られて、本会への一般の理解を深めるためにこんどの問題を「今後の放送制作に生かしていきたい」と積極的・多角的な取材を約束(別紙)されました。

 その後、生活ホットモーニングをはじめ各種の番組で本会への無理解を示すような問題場面がみられましたが、今回の2件で「これは“NHK倫理・行動憲章”の“放送倫理の徹底”にも反するのではないか、これ以上放置するわけにはいかない」という認識が本会理事会で確認されました。

 「石黒コメント」の趣旨がその後の「放送制作に生かされていない」ことはまことに残念です。トラブルごとに番組担当者が本会事務所を訪れて釈明文など出されるという悪循環を絶つためにも、しかるべき上部機関あるいは審査機関の公平なご意見を聞きたい。とくに「ご近所の底力」の冒頭近くで“厚生労働省の見解(?)”として「遺骨の上から土をかければ量の多少を問わず“埋蔵”に当たる」という“違法論”を紹介しています。あの場面で、あの“違法論”をNHKが天下に一方的に流した根拠と責任を明らかにしてほしい。

 以上一連の問題について海老沢会長のご見解をうかがいたいと存じます。以上


NHKの橋本新体制に改めて回答求める

2005年2月3日

NHK会長 橋本元一様

葬送の自由をすすめる会 会長 安田睦彦

抗議して回答を求めます

 「難問解決!ご近所の底力」や「くらしの経済」などNHKの番組をめぐって、昨年から今年にかけて当会から再三にわたり質問状(別紙4枚)を出してきました。これまでに誠意ある回答がありません。これはトラブル当事者が責任のがれに汲々としているためです。幸い、橋本新体制は視聴者の声にしっかり耳を傾ける、と宣言しています。問題番組の放送録画を質問状と対比して橋本元一会長、永井多恵子副会長、出田幸彦放送総局長らに十分に検討してもらいたい。この際質問状を抗議文に改めるとともに以下の点について2月25日までに文書で回答されるよう求めます。

(1) 話のねつ造に出演者もびっくり。
 「難問解決!ご近所の底力」という番組の性格から“葬送”の話にふさわしくない、と番組担当者に申し上げた。しかし、ぜひにもということで紹介したのが宮城県の会員Aさんでした。一戸建ての団地で隣人のご協力を得て、自宅庭で自然葬をされた方で“ご近所の底力”という番組にぴったりのケースと考えたからです。

 問題はAさんが自分で墓埋法をひもといて庭でも自然葬ができると思ったという導入部、そんな話はしておらず、墓埋法の話をひき出すためNHKが勝手にデッチ上げたとAさんは怒っています。なぜねつ造したのか。
(2) 公共放送の自己責任はどこに。
 そうしたねつ造までして墓埋法を持ち出し、「地面に遺灰をまいた上に少し土をかぶせても違法」と放送しました。少なくとも当会が15年前にスタートしたときから厚生省(現厚労省)は自然葬は墓埋法の対象外と明言してきました。葬送のために遺灰(焼骨)をまく行為が「埋蔵」に当たらないことは同省も当然視してきたことです。最近の樹木葬森林公園をめぐって地方自治体に対し同省が出した墓埋法の適用についての通達でも「地面に穴を掘り、その穴の中に焼骨をまいて上から土などかぶせて焼骨を埋めることは“埋蔵”に当たると解される」といっています。

 「地面に遺灰をまいた上に少しでも土をかけたら埋蔵とみなされ違法」のNHKコメントは誤りです。しかもNHKはその責任を厚労省に転嫁、NHKという公共放送としての独自の見識と判断を全く示しません。NHKの汚職事件にみる精神的退廃は、放送倫理の退廃にもつながっているのではないか。
(3) 自然葬の誇り傷つける。
 「くらしの経済」で放映された女性は、散骨の理由を後ろ向きの姿勢で小声で語っています。いかにも後ろめたいことでもあるかのような印象をふりまいています。本会の会員なら正面向いて誇りをもって語るところです。「ご近所の底力」では、自然葬という言葉は使わず散骨というように仕向けています。自然葬という言葉は、15年前に市民運動としてスタートした「葬送の自由をすすめる会」の理念と深く結びついています。その哲学に会員は誇りと共感を抱いています。その誇りを傷つけました。なぜ自然葬という言葉を避けたのか。
(4) 本会への偏見。
 (3)とも関連するが、一連の番組で樹木葬という特定宗教法人の墓地事業や業者の葬儀ビジネスの紹介に比べ、ボランティアに支えられた市民運動としての本会の活動が不当に小さく扱われています。石黒クローズアップ事件<注参照>以後、本会への偏見があるのではないか。

 違法といわれてきた自然葬に道を拓き、葬送の自由を啓発してきた本会15年の実績(会員1万1000人、自然葬の実施数955回、1627人、啓発のために開いたシンポジウム、講演会、自然葬相談会、市民集会、会員集会などは100回余―2月1日現在)をどうみているのか。
(5) 視聴者の選択の自由奪う。
 (4)とも関連するが、特定の宗教法人や業者の営業方法や料金などを中心に紹介、本会のボランティアに支えられた安い費用などが全く紹介されていません。格安、納得、選択術などとうたい文句だけは仰山だが、番組の実態は、視聴者の選択の自由を奪い、その利益を損うものになっているのではないか。
(6) 番組での誤りは番組で訂正を。
 当会が石黒クローズアップ事件で得た教訓は、番組での誤りの訂正は同じテーマの番組で訂正しないと意味がないということでした。違ったテーマでは視聴者の層が違うので訂正の効果がほとんどないということです。お墓をテーマにした「クローズアップ現代」の誤りを、京都の都市景観論争をテーマにした同番組の末尾で、2秒ほどで訂正しても耳にとめた人はごくわずかにすぎず、効果がないことが明らかになったからです。それは、自然葬が違法であるかのような印象を受けた視聴者から本会に問い合わせが殺到したことで証明されました。本会が受けた被害は甚大なものがあります。こんどの一連のケースでも同様で「葬送の自由」と「自然葬」をテーマに一本の番組をつくってもらう必要があると思っています。その点について正式な回答を求めます。

<注>石黒クローズアップ事件 1999年11月11日放映の「クローズアップ現代」の「あなたのお墓はだれが守る?急増!無縁墓」のなかで自然葬が違法行為であるかのような放送をした。会の抗議に対して、石黒プロデユーサーが詫び、会への一般の理解を深めるため、この問題を「今後の放送制作に生かしていきたい」と約束した。


本会の質問状にNHKから陳謝文

平成17年3月31日(2005年)

葬送の自由をすすめる会 安田睦彦会長様

NHK番組制作局情報番組センター長 太田文雄

拝啓

 桜の便りが聞かれる季節になりましたが、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。貴会におかれましては設立15周年を迎えられましたが、この間、葬送のあり方に新たな道を切り拓いてこられたことに敬意を表する次第です。

 さて、昨年来、私どもの放送番組にご意見やご批判をいただいてまいりました。番組に多大なご協力をいただきながら、十分な意思疎通を欠いて、結果的に会員の皆さまをお騒がせすることになったことは私どもの本意ではなく、お詫び致します。

 近年、「自然葬」など葬送のあり方について社会の関心が高まっております。私たちも大切なテーマとしてとらえ、取り組んでいきたいと考えています。関係者をお招きしての勉強会など、貴会のご協力をお願いしたいと思います。今後とも、ご指導の程よろしくお願い致します。